遺言についての連載3回目(遺留分)
遺留分の侵害とは?
遺留分とは、被相続人(亡くなった人)の財産について、一定の法定相続人が最低限受け取ることができる権利のことです。民法では、遺言によって全財産を特定の人に譲ることも可能ですが、遺留分が侵害される場合、侵害を受けた相続人は「遺留分侵害額請求」を行い、一定の財産を取り戻すことができます。
遺留分の対象と割合
遺留分が認められるのは、被相続人の**配偶者、子、直系尊属(親など)**であり、兄弟姉妹・甥姪には認められません。遺留分の割合は以下の通りです。
- 直系尊属のみが相続人:遺産の1/3
- その他の場合(配偶者や子がいる場合):遺産の1/2
たとえば、被相続人が全財産を第三者に遺贈した場合、法定相続人は遺留分侵害額請求をすることで、本来の遺留分に相当する金銭を請求できます。
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遺留分の侵害について500文字くらいで教えて
遺留分の侵害とは?
遺留分とは、被相続人(亡くなった人)の財産について、一定の法定相続人が最低限受け取ることができる権利のことです。民法では、遺言によって全財産を特定の人に譲ることも可能ですが、遺留分が侵害される場合、侵害を受けた相続人は「遺留分侵害額請求」を行い、一定の財産を取り戻すことができます。
遺留分の対象と割合
遺留分が認められるのは、被相続人の**配偶者、子、直系尊属(親など)**であり、兄弟姉妹には認められません。遺留分の割合は以下の通りです。
- 直系尊属のみが相続人:遺産の1/3
- その他の場合(配偶者や子がいる場合):遺産の1/2
たとえば、被相続人が全財産を第三者に遺贈した場合、法定相続人は遺留分侵害額請求をすることで、本来の遺留分に相当する金銭を請求できます。
遺留分侵害額請求の手続き
遺留分を侵害された相続人は、侵害を知った時から1年以内(または相続開始から10年以内)に、遺留分を侵害した受遺者や受贈者に対し、金銭による支払いを請求できます。
この制度は、相続人の最低限の権利を保護する一方で、被相続人の遺言の自由も尊重するバランスを取るものとなっています。
遺留分の算定方法
遺留分を算定するには、まず「遺留分を算定する基礎財産」を求め、そのうえで各相続人の遺留分を計算します。
① 遺留分を算定する基礎財産の計算
遺留分の基礎財産は、次の式で求めます。
基礎財産 =(相続開始時の財産)+(生前贈与財産)-(債務)
- 相続開始時の財産:被相続人が死亡時点で所有していた財産。
- 生前贈与財産:相続人や第三者に対して行われた生前贈与のうち、遺留分算定の対象となるもの(特別受益など)。
- 債務:被相続人が負っていた借金や負債。
② 遺留分の総額の計算
遺留分の総額は、基礎財産に遺留分割合を掛けて求めます。遺留分割合は次の通りです。
- 直系尊属のみが相続人の場合:基礎財産の 1/3
- それ以外の場合(配偶者・子がいる場合):基礎財産の 1/2
③ 各相続人の遺留分の計算
遺留分の総額を法定相続分の割合で分配します。
たとえば、
- 被相続人の財産が 6000万円
- 配偶者と子2人が相続人
の場合、遺留分の総額は 6000万円 × 1/2 = 3000万円 となります。
各相続人の遺留分は、
- 配偶者:3000万円 × 1/2 = 1500万円
- 子A・子B:3000万円 × 1/4 = 750万円(各自)
④ 遺留分侵害額の算定
遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求権を行使し、侵害された分の金銭を請求できます。なお、遺留分は原則 金銭での請求 となります(2019年の民法改正により物権的請求権ではなくなった)。
ここまでのまとめ
遺留分の計算は
- 相続財産・生前贈与・債務を考慮して基礎財産を算出
- 基礎財産に遺留分割合を掛けて遺留分総額を計算
- 各相続人の法定相続分に応じて遺留分を分配
- 遺留分が侵害されていれば、侵害額を金銭請求
このような流れで算定されます。
遺留分侵害額請求とは?
遺留分侵害額請求とは、遺留分を侵害された相続人が、遺産を多く受け取った相続人や受遺者(遺言で財産を受け取った人)に対して、不足分の支払いを求める権利のことです。2019年の民法改正により、それまでの「遺留分減殺請求権」から「遺留分侵害額請求権」に変更され、請求できるのは金銭のみとなりました。
1. 遺留分侵害額請求の要件
遺留分侵害額請求をするためには、次の要件を満たす必要があります。
① 遺留分を侵害されたこと
- 遺言や生前贈与によって、本来の遺留分を下回る額しか相続できない場合。
② 遺留分を有する相続人であること
- **配偶者、子、直系尊属(親など)**は遺留分を主張できる。
- 兄弟姉妹には遺留分がないため、請求できない。
③ 期限内に請求すること
- 遺留分を侵害されたことを知った日から1年以内(除斥期間)。
- 相続開始(被相続人の死亡)から10年以内(最長期限)。
- これを過ぎると、遺留分侵害額請求権は消滅する。
2. 遺留分侵害額請求の手続き
① 侵害額を計算する
まず、相続財産や生前贈与を考慮し、遺留分の侵害額を算定します。
- 基礎財産の計算 相続開始時の財産+特定の生前贈与−債務相続開始時の財産 + 特定の生前贈与 – 債務相続開始時の財産+特定の生前贈与−債務
- 遺留分割合の適用(全体の1/2または1/3)
- 法定相続分を考慮した個別の遺留分額を算出
② 受遺者・受贈者に対し請求を行う
- まずは**話し合い(任意交渉)**を試みる。
- 交渉が難航する場合は内容証明郵便を送付し、意思を明確に示す。
③ 調停・訴訟による解決
- 話し合いで解決しない場合、家庭裁判所で「遺留分侵害額請求調停」を申し立てる。
- それでも合意できなければ、**民事訴訟(裁判)**で決着をつける。
3. 遺留分侵害額請求のポイントと注意点
① 金銭請求のみ可能
以前の「遺留分減殺請求」では、不動産や株式などの財産の返還を求めることもできましたが、2019年の民法改正後は金銭での支払いのみとなりました。
② 期限を過ぎると請求できない
1年の短期消滅時効があるため、速やかに対応する必要があります。
③ 生前贈与も対象となる場合がある
被相続人が相続開始前10年以内に行った生前贈与も、遺留分の対象となることがあります(相続人への生前贈与は原則すべて対象)。
④ 遺産が現金以外の場合の支払い方法
不動産や株式などの資産しかない場合、受遺者・受贈者は分割払いの協議や、不動産を売却して支払うケースもあります。
4. 具体例
ケース1:子どもが遺留分を侵害された場合
【状況】
- 被相続人:父(死亡)
- 相続人:母と子2人(A・B)
- 遺言:全財産6000万円を母に相続させる
- 子の遺留分は侵害されている
【計算】
- 遺留分総額
6000万円 × 1/2(遺留分割合)= 3000万円 - 子A・Bの遺留分
3000万円 × 1/4(各自の法定相続分)= 750万円(各自)
【対応】
子A・Bは母に対し、それぞれ750万円の遺留分侵害額請求をする。
5. ここまでのまとめ
- 遺留分侵害額請求は金銭請求のみ可能(2019年改正後)
- 1年以内に請求しないと権利消滅
- 生前贈与も遺留分の対象になる場合がある
- 調停や裁判で解決するケースもある
遺留分を侵害された場合、速やかに計算し、交渉・請求を進めることが重要です。
行政書士が遺留分侵害額請求にどこまで関われるか?
行政書士は、主に書類作成や手続きのサポートを行うことができる資格ですが、遺留分侵害額請求に関しては関与できる範囲が法律で制限されています。
1. 行政書士ができること
① 遺留分侵害額請求の事前相談・アドバイス
- 遺留分の計算方法や請求の流れを説明
- 相続関係の調査(戸籍謄本・財産目録の収集支援)
- 必要な書類の案内
② 内容証明郵便の作成・送付
- 遺留分侵害額請求を行う際、まずは内容証明郵便を送付し、請求の意思を示すことが重要です。
- 行政書士は、この内容証明郵便の文案作成・代理送付を行うことができます。
③ 遺産分割協議書や合意書の作成
- 遺留分侵害額請求が話し合いで解決する場合、行政書士が遺産分割協議書や合意書を作成可能。
④ 相続関係書類の作成・提出代行
- 遺留分に関する書類の作成・役所への提出を代行できる。
2. 行政書士ができないこと(制限される業務)
① 代理交渉や裁判手続き
- 行政書士は弁護士ではないため、交渉代理や裁判手続きはできない。
- 受遺者・受贈者との交渉、調停や訴訟の代理は不可。
② 家庭裁判所での遺留分侵害額請求調停の代理
- 調停や裁判所への提出書類の作成は可能だが、代理人として出席はできない。
- 調停を申し立てる場合は弁護士に依頼する必要がある。
③ 法的アドバイス・示談交渉
- 「相手がこう言ってきた場合、どう対応すればいいか?」といった法律上の判断や交渉の助言はできない。
3. 行政書士と他士業の連携
行政書士は、書類作成や手続きサポートの専門家ですが、交渉・調停・訴訟が必要な場合は弁護士に依頼する必要があります。
ケース別の対応
状況 | 行政書士 | 弁護士 |
---|---|---|
遺留分の計算・手続き案内 | ○ | ○ |
内容証明郵便の作成・送付 | ○ | ○ |
相続関係書類の収集・作成 | ○ | ○ |
交渉・示談・調停代理 | × | ○ |
訴訟手続き・裁判代理 | × | ○ |
行政書士ができる範囲を超える場合は、早めに司法書士や弁護士と連携していますので、速やかに次の手続をとれるよう、弊事務所では態勢を整えています。
4. まとめ
✅ 行政書士ができること
- 遺留分侵害額請求の内容証明郵便の作成
- 相続関係の調査・書類作成
- 遺産分割協議書や合意書の作成
❌ 行政書士ができないこと
- 交渉・示談の代理
- 調停・裁判の代理
行政書士は「書類作成」と「手続きサポート」の専門家ですが、交渉・訴訟が必要な場合は弁護士の協力が不可欠です。
1. 遺言書の適法性と有効性の確保
- 専門知識によるサポート:行政書士は遺言書作成に関する法律知識を有しており、法的要件を満たした遺言書の作成を支援します。
- 形式不備の防止:自筆証書遺言や公正証書遺言など、各形式に応じた適切な作成方法をアドバイスし、無効となるリスクを低減します。
2. 円滑な相続手続きの実現
- 明確な意思表示のサポート:遺言書を通じて被相続人の意思を明確に伝えることで、相続人間の争いを未然に防ぐ手助けをします。
- 相続関係図や財産目録の作成支援:相続手続きに必要な書類の作成をサポートし、手続きをスムーズに進めることができます。
3. 個別事情に応じた柔軟な対応
- 相談に基づくオーダーメイドの遺言書作成:依頼者の家族構成や財産状況、特別な事情を考慮し、最適な遺言内容を提案します。
- 秘密保持の徹底:プライバシーを尊重し、相談内容や作成した遺言書の内容を厳重に管理します。
4. ワンストップサービスの提供
- 関連手続きのトータルサポート:遺言書作成だけでなく、相続発生後の名義変更手続きや行政手続きもサポートし、依頼者の負担を軽減します。
- 他士業との連携:必要に応じて弁護士、税理士、司法書士などの専門家と連携し、複雑な案件にも対応します。
具体的なサービス内容や特徴については、行政書士川村秀俊事務所に直接お問い合わせいただくことをお勧めします。
相続が争族になることを未然に防ぎ、連携士業とワンストップで対応させていただきます。